カウンセリングではどんなことをする?

はじめに

「カウンセリングって、何をするところなんだろう?」

説明を読んでも、いまひとつピンとこない。そう感じる方は少なくありません。「話を聞いてくれる」とは書いてあっても、どんなふうに? どんなことを話せばいいの? と戸惑うのも自然なことです。

なぜそんなに分かりづらくなってしまうのか。その理由と、もう少し伝わる形で「カウンセリングでできること」をお伝えしてみます。


1. なぜわかりづらいのか

理由のひとつは「秘密を守るため」。もうひとつは「誰かを傷つけないため」です。

心理職は、誰のどんな話も大切に扱います。でも、それを他の人に伝えるとき、たとえ個人が特定できない形にしたとしても、「あの話かな?」と感じさせてしまうかもしれません。だからこそ、あいまいな表現や抽象的な説明になることが多いのです。

けれど、「伝わらなさ」が壁になってしまうなら、カウンセリングを迷っている人の足止めをしてしまう。そこにもう少し橋をかけてみたいと思います。


2. どんなときにカウンセリングが必要?

「つらい」「苦しい」「うまくいかない」と感じたとき。それがサインです。

たとえば――

  • 「自分はおかしいんじゃないかな」
  • 「なんでうまくできないんだろう」
  • 「弱い人間って思われたくない」
  • 「友達にも親にも話せなくて、苦しくなる」
  • 「どうせ自分なんて…とあきらめてしまう」

そうした気持ちは、誰の心にも起こりうるものです。
カウンセリングは、その心の動きを一緒に見つめていく時間です。


3. カウンセリングで何をするの?

カウンセラーは、「うまくいくように導く人」ではなく、あなたが自分の力で歩みたい方向を見つけていけるように手助けする人です。

目的地(どうなりたいか)はあなたが決め、その道のり(どう進むか)を一緒に考えます。

たとえば、

「仕事は好きだけど、なぜか自信が持てず、前のように楽しめない」

そんな話が出たとき、まだどうなりたいのかということまで話せる感じではないかもしれません。目の前の仕事がうまくやれないということに焦点が当たっています。

そんな気持ちに寄り添いつつ、少しずつ、その背景を丁寧に聞いていきます。話すのがつらくなったら、無理に話さなくて大丈夫。「この人には話しても大丈夫」と感じてもらえるように、丁寧に聞きます。

そうすると、カウンセリング受けているAさんはこんなことを思い出します。「一生懸命に準備した卒論研究。人前で披露した時に、大きな恥をかいてしまった」


4. 心・からだ・考え方に働きかける

カウンセリングでは、心だけでなく、考え方や体の感覚にも目を向けます。Aさんの卒論研究の話の後、似たような仕事場面のことを振り返ります。そして、さらに子供の頃の話がありました。

ある程度できたところで先輩や上司に仕事内容を見てもらえばいいのに、「調べが足らない」「ミスがあったら評価が下がる」とつい考えてしまって、早めに相談することができない。わからないことを調べていると、わかっていることもちゃんとわかっているのかどうかも不安になってしまう。のどが詰まりを感じて、話せない。

実のところ、先輩も上司も優しい人であることはわかっている。良い人たち。ただ、かつて先輩に「もう少しここを調べておけるといいな」と言われたことはあった。でも、別に怒ってもいなかった。それもよくわかっている。

よくよく振り返ると、子どもの頃に、一生懸命に作った工作を見てほしくて父に見せた時、父はここをこうすると良い、ここはこうしないと。とより良くするためのポイントを言ってくれた。

でも、いつも父はそうで、自分が作りたいと思って作ったものをそのまま喜んで褒めてくれることはなかった。一方、妹にはどんなことにも無条件で褒めているようで、寂しかった。自分が小さくなるような感じがした。

自分のことは自分でやってきた。でも、自分でやり始めたことも、何がゴールなのかわからない。がんばっても無意味な気もしてくる。

自分のことをよくわかっていながら、自分ではどうにもならないことが起きます。その苦しさについて、カウンセラーのサポートを受けながら話を進めていくと、過去の寂しさが浮かび上がってくる、ということがあります。

この対話は、Aさんの心で何が起きているのかの一部を知ることができます。その寂しさやわかってもらえない感じに寄り添いつつ、仕事が好きな気持ち、自信が持てなくなったことについて聞きます。

5. さらに具体的に

「コンパッション・フォーカスト・セラピー(CFT)」という方法では、自分の痛みや苦しみに気づき、優しさを持って対応する力を育てていきます。

「助けてもらえなかった経験」が自分への厳しさにつながり、がんばりすぎたり、人との距離を取ってしまったりすることがあります。それが、自分を苦境に居させ続けていたことに気づき、自分への関わり方を変えるきっかけを練習していきます。

例えば、「スリーサークルズ・モデル」や「マインドフルネス」について学び、日常生活の中での練習をサポートします。そして、実際に試してみた結果をカウンセリングの中で一緒に振り返り、少しずつ心のバランスを取り戻せるように支えていきます。


6. おわりに

カウンセリングは、「変わる場所」ではなく、「自分を大切に扱う練習の場所」です。誰かに話し、聴いてもらうことで、自分の中の声が少しずつ整理されていきます。うまく話せなくても、黙ってしまっても、大丈夫です。そんなに上手に話ができる人はあまりいませんし、私もそうです。

もし今、言葉にならない気持ちを抱えていたら、それを言葉にしていく体験をしてみませんか。一人で悩んでいるよりも、少しずつ世界が、視野が広がります。待っています。

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